もくじ
『パーラー江古田』
2006年創業の『パーラー江古田』。石臼挽きの国産小麦粉とレーズン酵母や小麦酵母から作るパンや自家製のソーセージ、厳選されたチーズやワイン、そして東京・世田谷の珈琲専門店『堀口珈琲』の豆を使用した珈琲が提供されます。お店のテーマは「沖縄県のパーラーとイタリアのバール」で「パン飲み」の火付け役とも言えるお店です。
お店を始めたのは、ワーキングホリデーでオーストラリアに住んでいた頃、その街のカフェ文化に触れたことがきっかけ。元々はエスプレッソの美味しいカフェとしてオープンしたそうで、珈琲のお供として提供を始めたサンドイッチの為のパンが美味しいと評判を集め、今のようなパン屋に近い形になったそうです。
店主の原田さんは千葉・松戸のベーカリー『Zopf(ツオップ)』出身ですが、Zopf在籍中はカフェ作業(カフェの立ち上げ兼料理担当スタッフ)が多かったようで、パン焼き自体は、自分が食べ歩いた経験と独学の中から培ったそうです。現在は、本店の『パーラー江古田』と2011年創業、保育園併設のカフェ『まちのパーラー』、そして2018年創業、自然派ワインの販売所『パーラーさか江』と3件を展開されています。
「Chefs for the Blue(シェフズ フォー ザ ブルー)」
メニューの一角に突如「くじら」の文字。パン屋ではなかなか見かけないそのワードが気になり、調べたところ『パーラー江古田』の原田さんは「Chefs for the Blue(シェフズ フォー ザ ブルー)」の一員なんだそう。
「Chefs for the Blue(シェフズ フォー ザ ブルー)」とは、2017年に活動をスタートした、日本の海産資源を守る活動グループのこと。フードジャーナリストと東京で店を構える飲食関係者の約30名がメンバーに構成されており、2021年9月には京都グループも発足し、その活動は広まりつつあります。
具体的な活動内容は、サステナブル・シーフードを使用したレシピの開発やプロモーション、飲食関係者へのセミナー、フードイベント等、幅広く。NGOや研究者、サステナブルシーフード専門のコンサルティングファーム、政府機関などの専門機関と連携を取りながら、持続可能な海産資源の活用と食文化を未来へつなぐことを目指して、日々活動を行っているそうです。
その活動の一環として『パーラー江古田』でも、サステナブル・シーフードの認証を受けた「くじら」や「マグロ」を使用したメニューを提供しているようです。原田さんといえば、パンに使用される原料やチーズ、ワイン等にこだわりが強く、その生産者(生産元)に寄り添う姿勢が雑誌やインタビューなど、様々な記事で垣間見えます。パン屋としてまたワインセラーのオーナーとして、現状の「美味しい」を私達消費者(客)に届けることはベースとし、その美味しいを未来へ繋ぐための活動も行う姿勢に感服いたしました。
カフェ
カフェでは、好きなパンを選んで具材で挟んでいただけるサンドイッチや珈琲など、朝8時半からモーニングメニューの提供がスタート。閉店の18時まで、ランチやカフェタイムが楽しめます。またパンやお料理と一緒に、こだわりのワインやお酒をいただけるのも魅力のひとつです。
ちなみに姉妹店の『まちのパーラー』は、20時まで営業しており(コロナウイルスの影響により営業時間の変更あり)文字通り、朝から晩まで1日中楽しめます!気になる方はぜひチェックしてみてください。
今回は『パーラー江古田』のランチタイムにお邪魔させていただきました。
6〜8種類のスライスパンとサラダ、自家製豚もも肉のハム(自家製パテの時もあるそうです)やチーズ、カルピスバター、オリーブオイルが付いたパン盛り合わせ。パンは日替わりですが、この日は「カシューナッツと黒胡椒」、「チーズリュスティック」、「ベーコンエピ」、「グリッシーニ(イタリア発祥の細長いクラッカーのようなパン)」、「キッシュ」、「全粒粉のくるみパン」、「カンパーニュ」、「全粒粉のプチパン」、「フルッタ(ベリーとナッツのパン)」、「小麦酵母のフランスパン」etc…が大体2切れずつ。
比較的皮が厚く、ぎっちり締まったパン。
パン好きなのにスプレッド(パンに塗るもの)をあまり口にしない私。初カルピスバターでした。生クリームのようなバターのような、ミルキーで口当たりがよく「カルピスバターってこんなに美味しいのね!」と感動。オリーブオイルもフルーティーで芳醇な香りと上品な味わい。チーズは仕入れ具合で提供される種類も変わるようで、北海道『山田牧場』や岡山『吉田牧場』、八丈島『ゆーゆー牧場』のものが多い様子。販売も行っているようなので、気になる方はチェックしてみてください。
自家製のイタリアンソーセージ「サルシッチャ」に、サラダとスライスパン付き。田園調布の有名な精肉店『中勢以(なかせい)』の熟成肉から作る自家製のサルシッチャ。ソーセージやハム、パテ等、出来る限り店内で作るのが『パーラー江古田』のこだわりなんだとか。絶対に食べると決めていた念願のサルシッチャは、臭みがなく、じっくりと火を通しているのでバリッと弾けるジューシーさ。塩気が若干強いので「小麦酵母のフランスパン」との相性も◎!見た目通り食べごたえがあって、めっちゃくちゃ美味しいです!
店主こだわりのエスプレッソにミルク。
シチリア産の辛口白ワイン「Vecchio samperi(ヴェッキオ・サンペーリ) 」のザバイオーネ(卵黄を湯煎にかけて作るお酒の効いたクリーム)と八丈島産『ゆーゆー牧場』のジャージー乳のマスカルポーネ、ペルー産の「アマゾンカカオ」で構成された「ティラミス」。ザバイオーネは濃厚で官能的な味わい、舌触りが良くとろけるような美味しさです。とても大人な味わいです。
パン(テイクアウト)
『パーラー江古田』の原点である食パン。砂糖・油脂不使用。クラム(パンの内側)に大きめの気泡があるのは、生地の性質上なんだとか。吸い付くようなクラムのモチモチ感と、クラストの弾力。リベイクするとバリッと軽さが出て、香ばしさが増します。食パンの部類ではハード寄りの作りです。
味にも香りにも、こんなに奥深さがある食パンは初めてでどう表現したら良いか…でも今まで食べたどんな食パンよりも素晴らしいことは、間違いありません。店員さん曰く、5枚切りが最も美味しく食べられる厚みのようですので、ぜひお試しください。
「全粒粉の食パン」と同じ生地で作る「プチパン」は、「スペシャルパンセット」にも付いていて、感動したパンのひとつ。ふわっと優しい生地感が口当たり良く、しっかりとクラストの存在感があるようなパン。全粒粉の香ばしさとほのかな甘味があります。
ゴーダチーズが練り込まれているリュスティックは、ベース塩味でシンプルなお食事パン。高加水でむっちむち、リベイクするとクラストがバリッとします。こちらも「スペシャルパンセット」に付いていて、あまりにも美味しかったので購入。
レーズン酵母と小麦酵母の2つを使用して作るパン。表面を覆い尽くす白ごま、中には黒ごまが練り込まれています。炒ったりせず大胆に胡麻を使用することで、自身の口の中ですり潰され香りがピークに!生地はハードで、むっちりみっちり。香ばしさの爆弾…旨味しかない。
コクのあるアーモンドクリームにゴロンと角切りのさつまいもが乗ったタルト。季節によってフィリングは変わるそうです。ザクッと食感が良く、バターのリッチで香ばしい味わい。さつまいものほっくりと自然な甘味が冬らしくて美味しい、人気の一品です。
♥♥♥♥♡ ぞっこん度:4.7
私が好きな東京・竹ノ塚のベーカリー『市東製作所』の店主が『パーラー江古田』の出身だったので「いつか『パーラー江古田』のパンを食べに行く。」と決めていたのですが、今回初めて『パーラー江古田』のパンを頂いてみて「ああ。『市東製作所』の店主が美味しいパンを提供してくれるのは、こんなに素晴らしいパン文化に触れて修行されたからなんだな。」と腑に落ちました。
丁寧な作業が伺えるものの、作り込みすぎたり繊細過ぎず、ダイナミックで、ある意味不器用なパンたちがとても良いなと感じました。あれやこれやディテールが施された現代的なパンよりも、クラクラと酔いが回りそうなくらい奥深く味わい深い古典的なパンの方が、私は好き。「小麦を愛してる!」とか「パンがないと生きていけぬ!」という方は、ぜひ一度食べるべきかと思います。「絶品」ってこういうお店に出会ったときに使う言葉なのだろうな…そんなパン屋さんです。次回関東に帰省したら、こちらのパンを頬張っている自分が目に浮かびます。
「パーラー江古田」
定休日 | 火曜日 |
営業時間 | 8:30~18:00 |
住所 | 東京都練馬区栄町41−7(地図) |
TEL | 03-6324-7127 |
予約 | 不可 |
駐車場 | なし |
「まちのパーラー」
定休日 | 火曜日 |
営業時間 | 8:30~21:00(L.O.20:00)水~日曜日 8:30~18:00 月曜日 |
住所 | 東京都練馬区小竹町2丁目40-4(地図) |
TEL | 03-6312-1333 |
予約 | 可 |
駐車場 | なし |
2022年2月14日 心を込めて雅